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七星として名乗り出てから倶東、北甲、西廊の3国に赴いた。
故郷を離れてから6年、各地を旅したがやはり紅南がよいと思うのはやはりここが生まれ育った地だからなのか。
見上げれば月が丸く円を描いている。
こんな風に空を眺めるのはどれくらいぶりなのだろうか。
紅南の地に戻ったのは数刻前。
疲れた体と思いつめた顔をした巫女と七星たち、そして動かなくなった張宿を見て星宿は何も言わず笑顔で出迎えた。
聞かずとも数の合わない七星士を見て察したのだろう。
事情は今すぐにでも聞きたいだろうに、何よりも先に休息の時を与えてくれた。
そんな優しさに感謝しながら、どこか心が痛かった。
全員で帰ってくる!
そう約束したのは遠いようで近い過去。
能力は使えるようになっても、何も出来なかった自分がただ歯がゆく、実践では何も役に立てなかった自分に苛立つ。
まだ若く、生きていればどんな未来が待っているか分らないというのに。
失うものはすべて失ったと思っていたが、すっぽりと抜けてしまった何かに自分にとって彼らがいつのまにかかけがえのないものたちになっていたのだと気づく。
いつも、気づいた時には遅い・・・
死にたかったのかと問われれば「否」と答える。
だが生きていたいのかと問われれば、わからない。
両の肩に乗せられた宿命はあまりに重い。
だが今まで支えていられるのは、こんな自分にも仲間というかけがえのない存在がいたからなのだ。
失った分重くなった宿命は、これからも支えられるのだろうか・・・
「眠れないのか・・・」
どれくらいそうしていたか、不意に後ろから声がかけられた。
「・・・軫宿」
月明かりに照らされた影は声の主。
「どうしたのだ?」
「お前が、外に出て行くのが見えたからな・・・」
「すまない、起こしたのだ?」
こっそりと音を立てずに出たと思っていたが。
「いや、俺も眠れなかったからな」
「生き残って、しまったのだ・・・」
「・・・そうだな」
無意識に出た弱音ともいえるその発言に言った張本人が少々驚いた。
「また、生き残ってしまったな」
どこか遠くを見て言う軫宿にそうか、と思う。
軫宿の過去は聞いたことはないが、彼も自分と似たような境遇だったのかもしれない。
「張宿は最期、俺たちに「ありがとう」と言っていた・・・」
「そうか」
あの時、箕宿が倒れたとき油断したのは張宿だけではない。
むしろ術者である自分が1番に気づくべきだった。
そう思っては悔やんでも悔やみきれない。
知らずに握った拳に力が入る。
「オイラこそ、張宿にありがとうと、伝えたいのだ・・・」
たった13歳の少年の勇気ある決断。
出来ただろうか、自分が同じ年頃の頃に。
聡い子だから、これが最善だと判断したのだろうが。
「役立たず」とか「何も出来ない」と言っていたが、彼の行為が自分たちを先に進ませてくれた。
だが、結局は青龍召喚を阻止できなかった。
出来ることなら最期を看取りたかった。
「朱雀七星士の宿命を・・・張宿は」
命を懸けて巫女を守り、国を守る。
それが七星士の宿命。
「立派にやり遂げたのだ」
空を仰ぐ。
「無力だな、俺たちは・・・」
「あぁ・・・・・・だが、立ち止まるわけにはいかないのだ」
ここで立ち止まったら、あのときと変わらない。
後悔はしないと決めたから。
それに、
「柳宿や張宿の死を、未来に繋げる」
無駄にはしない。
青龍の巫女を止める。
朱雀を呼び出す。
「それがオイラたちの役目」
自分たちに何が出来るかわからない。
そして、これから始まる新たな戦い。
朱雀の巫女、青龍の巫女。そして両者の間にいる鬼宿。
青龍の力を得た唯、心宿がどう出てくるか。
「あぁ、繋げていこう。未来へと」