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いつか、きっと





 彼、鬼宿は悩んでいた。

 巫女を守り朱雀を呼び出し国を守るという大きな使命を持つ朱雀七星士とはいえ、まだ若干17歳の彼は悩める思春期の少年。それも仕方のないことだ。

 そんな彼が悩んむ理由は大きくわけて2つある。

 1つは家族のこと。もう1つは朱雀の巫女、美朱のことである。

 そして今回も例に漏れることなく朱雀の巫女、美朱のことであった。

 先日、美朱の世界のイベントで゛ばれんたいん゛というものがあった。それは本来は男と女のイベントであり女が男に告白の意を込めて゛ちょこ゛を贈るというものであった。

 美朱と恋愛関係にある鬼宿はチョコを貰った。

 いろいろと苦難の道を通ったが、なによりもその行為そのものはとてもうれしいものだった。

 愛を受け取ったからには美朱へ伝えなければいけない。

 が、そこが問題なのだ。

 彼女の喜びそうな食事に誘いお腹いっぱい食べさすてあげようかと思ったが、朱雀の巫女という立場にある彼女は日頃豪華な宮殿の食事をお腹いっぱい食べている。

 それにどうせなら形に残る物がいい。

 ならば少し奮発して綺麗な簪でも贈ろうかと思ったまではよかったが残念なことに先立つものがない。

 タイミングの悪いことにチョコを貰う3日前に弟から手紙を貰ったのだ。

 内容は家族のことや国のために働く長男への激励だったのだが、

 「今年は不作だけどなんとか食いつなぐことは出来るから心配しないで」などということをチラリと書いていたのを頼もしい長男が見逃すわけもなく、

 ちょうど少し貯まったお金も出来ていたので翌日に家族たちの元へ届けに行ったのだ。

 家族と美朱を天秤にかけることは出来ないが、どうしてこう両方重なるのだろう。そう思い大きく息を吐く。

「どうかしたのだ?」

「井宿・・・」

 七星として宮殿へ迎え入れられても続けているよろず屋は運悪くなかなか仕事が入らない。

 彼女を喜ばす術を知っているだろうかと相談しかけて、やめた。

「いや、何でもねぇ…」

「・・・何なのだ、そのオイラに話しても仕方がないというあからさまな態度は…」

「えっ・・・いや・・そんなつもりは…」

 ハハハと軽く鬼宿に小さくため息をついた。







「そういうことだったのだ・・・オイラにも似たような経験あるのだ」

 苦笑しながらそういう井宿を少し意外な感じがしたが年を考えれば恋愛経験の1つや2つあっても少しもおかしくない。

 ただあえて「似たようなことが」と言ったのは井宿に相談しても解決しないと思ってしまったことにする井宿なりの小さな反論だろう。

 鬼宿としては、見た目は年齢不詳正体不明だから仕方ねぇよ。と本気で思うのだが。

「金がねぇからなんで格好悪いし・・・貧乏つーことはあいつも知ってるけどよ・・・何より美朱が苦手な料理作ってまで俺に気持ちを伝えてくれたのに何も出来ねぇなんてみっともねぇ」

 目をそらし僅かに頬を染めた鬼宿を微笑ましく思う。

 若いのだ・・・と思い自分の過去を思い出し少し胸が痛む。

 でも美朱や鬼宿たちには自分たちのようになってほしくないのから。

「鬼宿君は美朱ちゃんがどう思っていると思うのだ?」

「どうって・・・」

「美朱ちゃんは何をしたら一番喜ぶと思うのだ?」

 だからそれが一番問題なのだが。と小さく思うが口にしないのは誰かに答えを貰うようなことではないと分っているから。

「何が欲しいかじゃなくて、何に対して喜ぶか。だよな」

 どっちみち何かを買おうと思っても今すぐには無理なのだから。

 どれだけ自分が美朱のことを真剣に思っているか、何よりもそれを伝えたい。

「ちょうど今は休息のときなのだ。どこか2人で出かけてくるといいのだ」

「井宿・・・」

「オイラに出来ることがあれば手伝うのだ!」











 連れて行きたい場所はある。

 でもそこは少し遠いからほんの少し人の手を借りるけど、きっと美朱なら喜んでくれる。

 みんなも喜んでくれる。

 これから何があるかは分らない。

 けれど、

 いつかきっと、一緒にずっと離れることなく手をつないでいたいから。





「美朱、一緒に行きたい場所があるんだ」







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