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井宿と食べ物(または飲み物)サンタタグ2016 都さんへ

「ねぇ。柳宿と一緒に街に行くんだけど、井宿は何が好き?」
 突然顔を見るなり走ってきたと思ったら突拍子も無い言葉。
「だ?」
「だから、お菓子何が好き?みんなで食べよう!」
 ああそういう事かと納得する。なんとも彼女らしい。
「別にオイラは何でもいいのだ。美朱が好きなのを買ってくるのだ」
 好意で言った言葉だが美朱にはお気に召さない言葉だったらしい。
「ダメだよ!みんなの好物買ってきて、北甲国に行く前にお菓子パーティしよう!」
「こ、好物?お菓子パーティ」
 難易度が上がった。
「あんたも好きな食べ物の一つや二つあるでしょう」
「い、いや別になんでも」
「はあ?あんた食事して何も感じないわけないでしょう?」
「そうだよ井宿、好きな食べ物がないなんて人生損してるって!」
 好物を連呼する美朱には苦笑するしかないとして。
 全員でお菓子ぱーてーとやらをしようと思っているのなら美朱たちの望む言葉を言うまで解放してくれないのではないだろうか。
「だー。確かに宮殿の食事はとてもおいしいしありがたいのだ」
「ありがたい?」
「だ。苦労せずに得られる食事はとてもありがたいのだ」
「あんた…いったいどんな生活してんのよ…」
 現代から来た美朱は当然として、衣服問屋で生まれ育ち少し前まで後宮で暮らしていた柳宿には想像すらつかない。
「だー。食事に関して言えば、いつも木の実や果物、山菜を探しながら歩いているのだ。木の実や山菜薬草がたくさん取れた時は近くの村で饅頭やチマキを交換して貰ったりするのだ」
 ニコニコと笑顔で語る井宿に開いた口がふさがらない。
「肉や魚は?…ってお坊さんは食べちゃだめなんだっけ?」
 坊主かどうかはともかくまず食べる機会が極端に低いのは確かだ。
 柳宿があからさまに大きなため息をつくとビシリと井宿に指をさした。
「あんたのその体型の理由が分かったわ!」
「だっ…」
 じろりと全身見られ居心地悪い。
「男にしては細いのよねぇ」
「人の体格を指摘するのは失礼なのだ。それに君ほどじゃないのだ」
「言ってるじゃないの!それに今はあんたの話よ!骨格自体はきちんと成人男性のものだし筋肉がないわけでもない…けど!」
「だっだっ。一体なんでそういう話になるのだ?」
 というか、裕福に過程で育った少年時代よりも…という言い訳じみた話は一蹴される。
「お腹いっぱい食べ…てるわけないわね。その食生活じゃ。軫宿に指摘された事あるでしょ」
 子供を叱り倒す柳宿の勢いに思わず後ずさる。
「く、詳しいのだね…医療の心得でもあるのだ?」
「あるわけないじゃない。服屋の娘の観察眼なめないでほしいわ。否定しないっことはあるのね」
 倶東国から鬼宿奪還の後軫宿の診察を受け、同じような事を言われたことを思い出す。
「今晩、楽しみにしてなさい。あんたでも食べれる栄養たっぷりの食事作ってあげるわ」
「だ?」
「え?柳宿作るの!やったー!」
「大勢でわいわい食べる楽しさ、あんたにも星宿様にも味わってもらいたいもの」





 あれからお菓子ぱーてーとやらの誘いは来ないまま夕食の時間を迎えた。
 一体何を言われるのやらとこわごわと食堂を覗くと美朱に引っ張られるように席に座らされた。
「今日は何があってもみんな一緒に食べるんだよー!井宿ってご飯時にいないことよくあるから」
 坊主という職種で食べるものが限られていることを考慮され井宿には肉や魚を使わない精進料理に近い料理が出されるが今晩は全員が同じメニューのようだ。
「なんやこんなん腹にたまらんやんか」
「あんた私に文句があるっていうの!?」
 小さく翼宿が文句を言ったのを一喝させる。
 それもそうだろう若い翼宿には少々物足りないかもしれない。
「軫宿と考えて体にいい料理を私が作ったんだからね!これから青龍七星士と戦うことになるかもしれないんだから肝心な時に調子崩しちゃいけないでしょ!」
 柳宿の向かいの席の軫宿が無言でうんうんと何度も頷く。
「うん。柳宿の料理すごくおいしかったよ!」
「あんたはつまみ食いしすぎよ!」
 悪びれる様子笑う美朱もつまみ食いは時効のようで食べる気満々である。
「井宿さん。柳宿さんと軫宿さんのお話聞いて僕も少し柳宿さんにお願いしたんです」
 隣にいる張宿が小さな声で話かけてきた。
「僕よく勉強してると食事を忘れたりすることがあったんです。気が付いたら夕食の時間もとうに過ぎてて、きっと何度も呼んでくれたんですよね。なのに食べれなくて。せっかく作ってくれた母に申し訳ないし今さら食事とも言い出せなくて。そういうとき兄者がよく持ってきてくれたんです。桃を」
「桃?」
「はい。楽しいこと夢中になれることを見つけるのはとても良いことだ。けれど根の詰めすぎはよくない。って怒られました。甘い桃はとてもおいしかったのをよく覚えてます」
 優しく笑う張宿の思い出てはとても暖かくこちらのほうが癒される。
「甘いものは疲れたときや頭をよく使ったときにとてもいいと兄に教えて貰いました。井宿さんの術って精神を使うものですよね」
 ご存じだったかもしれないですけど。と恥ずかしそうに言う張宿に心が温かくなる。
(母様が兄様と食べなさい。って)
 そういえば、役人になると確固たる目標を見つけ勉強に根を詰めていた時、何度か妹が持ってきてくれたことがあった。
 父も母も何も言わなかったが、きっと心配してくれていたんだ。
 ついでに思い出したが、修業の時娘娘に渡された桃を食べてくたくたに疲れていたのに嘘のように体が軽くなったこともあったな…あれは桃に何か仕掛けられていたのかもしれないが。
「ありがとう張宿。大好きなのだ桃」
 心配かけてばかりだ。
 桃に手を伸ばす。
「井宿っ!桃もいいけど先に私の料理食べなさい!」
 また怒られたのだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
サンタタグ参加ありがとうございます都さん。

マイ設定で井宿って自覚ないけど甘いものとか果物好き(普通に無茶とかしそうなので甘いものを体が欲しがってる)ってのがあってそれ使おうと決定。
原作後はたまと一緒に旅してるけど、どこかの家に泊めてもらって家族団らんを見てこんなことがあったって思い出したりしてたらいいなぁ。
井宿の楽しい思い出を一つでも増やしたい。
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